チャップリンの祈り

 私は独裁者にはなりたくない。支配はしたくない。出来れば援助したい。ユダヤ人も黒人も白人も、人類はお互いに助け合うべきである。他人の幸福を念願してこそ生きるべきである。お互い憎み合ったりしてはならない。世界には人類を養う富がある。人生は自由で楽しいはずである。貧欲は人類を毒し、憎悪は憎悪をもたらし、悲劇と流血を招く。
 思想だけがあって感情のない人間はダメである。知識よりも思いやりこそが必要である。思いやりがないと暴力だけが残る。兵士諸君、犠牲になってはいけない。独裁者の奴隷になってはいけない。愛を知らぬ者だけが憎しみ合うのだ。人生はもっともっと美しいものである。ハンナ、聞こえたかい・・・。 
   (「独裁者」ラストの演説より)

毎日ムック : 「淀川長治の証言 チャップリンのすべて」 : 毎日新聞社

 あの「独裁者」(1940年作)はヒトラーがポーランドに侵入したときに作った。かかるときにヒトラーを叩きつける映画を命がけで作ったチャップリン。しかもサイレントを守りとおしたチャップリンがついにトーキーに本格的に乗り出して、しかも理髪店のやさしいユダヤ人とヒトラー、このふたりの声をチャップリンひとりで、そのふたりこわいろでやってのけたばかりか、「独裁者」のラストはヒトラーに扮したチャップリンがヒトラーとまさに反対の名演説をやってのけた。(淀川長治:同本の巻頭言{チャップリンの本を心をこめて」より)

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