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森崎和江の祈り もう泣くのはやめましょうね 筑紫の三婆(さんばば)----勝手にこう呼んで敬愛している作家が九州にいる。宗像の森崎和江さん、水俣の石牟礼道子さん、奄美の島津ミホさん。共通するのは、近代日本が切り捨ててきた民衆の魂を凝視するまなざしだ。森崎さんの新詩集『ささ笛ひとつ』(思潮社)は、亡き両親と52年前に自死した弟にささげられている。
植民地化の朝鮮に生まれ、17年間暮らした私は、かの地の人たちと大地にわびたいという原罪意識のもとに生きてきました。その朝鮮は父と母の思い出に満ちています。 最近、「濡(ぬ)れ甲羅」という詩を書いた。弟への鎮魂歌である。
早稲田大学の2年生でした。作曲家になる中村八大君と一緒にお芝居をしてたの。東京から久留米の私の家に突然やって来て、庭先で「甲羅を干させてくれないかー、和(かず)んべー」と呼んだのです。私と同じ自分探しの末に疲れ果てて。敗戦の世相に負けずに生きようと話していたら、「女はいいよね、命を宿すことができるんだもの。子供を手がかりに生きられるんだから」と生後間もない私の長女を見て言いました。その言葉の深みが私にはわからなかった。東京に戻って数日後に死にました。「僕には故郷(ふるさと)がない」と書き残して。21歳と1ヵ月でした。 韓国の巨済(コジェ)島で知的障害者児施設の園長をしている旧友が、今年も5月に宗像まで修学旅行に来ます。明日は打ち合わせなの。さあ、チマ・チョゴリを着て元気を出しましょう。 森崎和江(インタビュー・白石明彦) : 「もう泣くのはやめましょうね」 :2005年3月13日朝日新聞統合版 |