安田善次郎の祈りT

誰しも人から悪口をいわれると、一時は好い気持ちはしない、誤解を受ければそれを弁解したいと思うのは人情である。けれども私はいずれの場合にも、これは天がいわしめられるものである、自分の注意の足りない所を天が訓戒せられるものであると受取って、必ず身ら反省して後来(将来)を戒めるのである。汝の敵を愛せよという言葉は、この場合に於いて最も適切であると思われる。普通の友は自分に対して気に逆らうようなことはなるべく遠慮していわない、けれども 敵であれば、自分の欠点短所を遠慮なく暴露する、自分が自分の過失を覚えることの出来ない場合に、敵は遠慮なく真実を指摘してくれる。故にそれを取って以って後日の戒めとして修養すれば、敵の我に対する悪言は、我を策励(さくれい)する所似の忠言に外ならず、誹謗は我の真実を映す鏡ではないか。こう考えて見れば、敵は我を鼓舞し激励させる所似の良友であるから、汝の敵を愛せよとの古言は実に金言である。

安田善次郎:著:「意志の力」 : 安田生命保険相互会社 発行

安田善次郎氏は、明治政府の民間銀行の礎を作った人である。お金を儲けるということに主眼を置いたわけではなく、東大の安田講堂や日比谷公会堂を寄付して日本の学問やクラシックやポピュラー音楽に多大の貢献を行った。日本の西洋化の創世記には、社会貢献を目的にして、自分の利益や都合よりも優先させた篤志家が多かった。現在の自分の利益だけを考えて莫大な利益を得て、売名行為のボランティアを行う人々とはスケールが全く異なっていた。
日比谷公会堂は、戦後に音楽専門のホールが出来る今までも、多くの西洋音楽を日本に紹介したり、西洋のポップスを日本に紹介する伝導所になっており、その西洋音楽の日本に広める文化の土台、社会貢献になっているのである。

 

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