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W.A.モーツアルトの祈り 「・・・・・ここのところ、夜となく昼となく、私は希望と恐れの間をさまよっています。でも私はすべてを神の御心に委せることにいたしました。そして、お父様もお姉様も、私と同じような気持ちになられるものと思っています。それ以外にどうやって心を平静に、いえ、私たちはどうしても平静ではいられないのですから、少しでも平静に近づけるようにするにはどうしたらよいのでしょう。なるようになれ、私はすべてを天に委せました。----神は私たちに良かれとすべてのものを律したもうのであり、たとえなにか私たちの目に理解のいかぬことでも、神はそのようにお考えになってのことなのですから。そのうえ、私は、どんな医者も、どんな人間も、どんな不運も、どんな幸運も、一人の人間に生命を与えたり、奪ったりすることはできないと信じています。(この点については、だれも私の考えを変えることはできません)。それを行えるのは神だけです。・・・・・私たちのまわりでは、人が気を失い、倒れ、死んで行きます。私たちは、その時が来れば、どんなことをしても無駄です。なにかすれば、死ははやまりこそすれ、遅れることはありません。故友のヘフナーの場合もそうでした。 「では、さようなら。お体を大切に。神を信じて下さい。それだけが希望の綱です。お母さんは主の御手にあります。私たちの願いどおり、もし主がお助け下されば、私たちはその御恵みに感謝いたしましょう。しかし、神の御手もとに召されるのがみ心であるなら、私たちが、恐れ、悲しみ、嘆いてみても無駄なことでしょう。それより、毅然として神の意志にすべてを委せ、それもつまりは私たちのためなのだと信じましょう。なぜなら、神は理由のないことはなさらないのですから。 中公文庫 : 石井 宏 著 : 「素顔のモーツアルト」 |