水野源三さんの祈り
有難う
物が言えない私は
有難うのかわりにほほえむ
朝から何回もほほえむ
苦しいときも 悲しいときも
心から ほほえむ
父
六十近い父が
自動車教習所に
通い出した
免許証をもらったが
一度も運転しないで
天に召されてしまった
日記には
免許証を取って
源三を乗せたいと
書いてあった
母の上に
肩の痛さ足の痛さをこらえながら
重い孫をお守りしながら
体の不自由な私の面倒を見てくれる母の上に
愛のきわみなる神様
あわれと恵を 助けとささえを
豊かに御与え下さい
生きる
神さまの
大きな御手の中で
かたつむりは
かたつむりらしく歩み
蛍草は
蛍草らしく咲き
雨蛙は
雨蛙らしく鳴き
神さまの
大きな御手の中で
私は
私らしく
生きる,,
今日一日も
新聞のにおいに朝を感じ
冷たい水のうまさに夏を感じ
風鈴の音の涼しさに
夕ぐれを感じ
かえるの声はっきりして
夜を感じ
今日一日も終わりぬ
一つ事一つの事に
神さまの恵と愛を感じて
日本基督教団出版局 : 和田 登 作 : 「まばたきの天使」より
水野源三さんは、昭和21年小学校4年生の時に重症の赤痢に罹り、脳性マヒになった。水野さん自身の努力と、ご家族の献身的な介護で、瞬きで自分の意思を表現できるようになった。4冊の詩集と短歌を残して、昭和59年47歳の生涯を閉じた。残されたそれらの作品は、今でも多くの人に勇気と生きる力を与え続けている。
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